神去(かむさり)なあなあ日常【読書】


著者:三浦しをん

お勧め度75%あげ
読み易さ65%

『神去村(かむさりむら)』というのは、神隠しでさえ日常的に(?)おきる、江戸時代から忘れ去られたような、だけど携帯の電波はバッチリ通じる村。ここ住む住民は何事においても「なあなあ」と言うのが口癖。その村に勇気は親の陰謀で山師として修行するはめに。勇気は名前だけは勇ましいのだけど、なにせ横浜生まれの現代っ子。いきなり木に登って木から木へ渡り歩く芸当など出来るわけもなく、最初のうちは「せっかく育てた木を切るなんて可哀そう」。などと言う始末。そんな勇気に一から山師の仕事を教えるのが『ヨキ』こと飯田与喜。一から教えると言っても、ヨキはもっぱら勇気を置いて一人で仕事をして『見て覚えろ』タイプ。

そんな置いてけぼりの勇気に分かりやすく仕事を説明してくれるのが、山の持ち主でもある『中村清一』。三郎じいさんも陰で勇気を見守ってくれる。ホームシックになる間もなく月日が流れるが、一度だけ勇気は『神去村脱出計画』を試みる。その時出会うのが『直紀』。勇気、18歳、恋の予感。果たして直紀は勇気の運命の人なのか?ヨキは勇気の恋を知り、勇気をはやし立てる。

慣れない環境、慣れない仕事を一つづつ覚えながら少年が青年へと成長していく過程を描いている。勇気はどこにでもいる都会っ子だけど、例えば『せっかく植えた木を切るのは可哀そう』とか、夏祭りに蒲焼にして『売るために捕まえた鰻』に腹が減らないか?とえさを与えたりする所が可愛らしい。物語としては春夏秋冬で分けて描かれていて、夏祭りと冬の行事が印象的。特に冬の祭りの最後のクライマックスは迫力満点!オオヤマヅミさまに見守られながら、勇気は山を駆け巡り、山師として村の人々に認められる。勇気、一歩大人になったね!

山師の仕事の説明をしている部分は慣れない言葉などが出てちょっと読みづらいかも。三浦しをんさんの作品では以前【まほろ駅前多田便利軒】を読んだことありますが、こちらの作風とはちょっと異なるかな?【まほろ駅前多田便利軒】では大人の迷路のような感じでしたが、こちらは主人公が18歳というだけあって、新鮮でフレッシュな感じでした。途中読みづらい部分(専用用語の部分)があるけど、最後まで読んでみてほしいと思います。

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クローズド・ノート

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クローズド・ノート
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クローズド・ノート
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価格:700円
著者:雫井脩介

総評:★★★★★+AA

読み終えて、私も伊吹先生の生徒になりたい!って思いました。こんなに素敵な先生が担任だったら学校がさぞかし楽しいだろうと。物語は堀井香恵が住むアパートの前住民だった伊吹先生が残した『太陽の子通信』という学校日誌のお話と、時折書かれている伊吹先生の恋物語、それを読みながら自分の人生と重ね合わせ、大人になっていく堀井香恵の青春物語を描いています。

落ち込んだ時。

嬉しかった時。

なんとなく、そのノートを開く。

そこに、ときめきがあるから…。

クローズド・ノートにはそう、魔法がかけられている。

そのノートを開くと人は優しくなれる。

そのノートを開くと人は強くなれる。

だから、あなたにも開いてほしい…このクローズド・ノートを。
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ホームレス中学生

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ホームレス中学生
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価格:1,365円
総評:★★★★★
著者:田村裕

最初はお笑いの人が書かれた本だと気がつかずに買いました。途中、『ご飯』をいかに満腹感を味わうために食べるか、という事を実験していた兄弟は、ある日味がなくなった後も噛み続けていると、最後に『ピュ!!』と味がすることを発見した、というエピソードを読んだとき、あ!この話聞いた事ある!と思って、その時初めてお笑いの方が書かれた本だと気がつきました。そして書かれてある内容から、時代背景が80年代の『バブル』の頃だったことも分かりました。中学生である著者はホームレス生活をするために自動販売機の周りに落ちているお金を拾ってパンなどを買うのですが、兄弟と暮らすようになってから、しばらくの間は生活保護のお金で生活に困りませんでしたが、ある日生活保護を打ち切る事になってから再び極貧乏な生活をする時期に、前高確率でお金が落ちていた『宝島』と呼ばれた自販機の周りにもあまりお金が落ちていなくなっていたそうです。

私がこの時のエピソードを読んだ時真っ先に思い出したのは、自分の家の生活保護が打ち切られた時の状況でした。私の家は父親がいなかったので生活保護を受けていましたが、兄が独立し働き始めた事を理由に、市役所の方が『生活保護を打ちきってくれないか』と話をしに来たのです。お母さんは断ることが出来ずに生活保護を打ち切りました。私が覚えているのは立派なスーツに身を包んだお役所さまの職員と、困惑した顔をした母の顔です。あまりはっきりとは覚えてないんですが、私は小学生か中学生で、子ども心に(早く独立しなきゃ)と思ったものです。本当に困っている人に行き渡らない保護制度、どうやったら改正ますかね?母は亡くなる直前にやっとの思いで借金を返済してました。私が33歳の時。生活保護を打ち切られて20年間、借金を返し続けて計算になります。(もう少し保護が受けられたら、もっと早く借金を返せたかもしれない)という思いがよぎります。

本当に弱いものに行き渡らない制度は『くそくらえ』と思います。そして最近ニュースでやってた『身体が悪いふり』をして生活保護を受けている人も、前から知ってますし、昔からそういう人はいました。たまたまニュースでやったというだけで、知ってる人は知ってたと思う。それを『役所』の人だけ知らなかったのは嘘だと思う。知っていても、打つ手がないから知らん顔してるだけなんです。母の話ばかりになって申し訳ないけど、母は被爆者でした。しかし、その保護は受けられませんでした。理由は母が被爆者だという『証拠』がないからです。母が被ばくした時に周りにいた人たちはみんな亡くなってしまいました。だから母が被ばくしたと証言してくれる人がいなくて、保護が受けられなかったのです。この事も世の中の不条理を感じます。もしちゃんと被爆者としての保護が受けれてたら、母はもっと楽な生活ができただろうし、自分の子供に満足にご飯を食べされられなくて申し訳ない、という思いもせずに済んだかもしれない。そう思います。

おっと。話が私の母の話ばかりになってしまいました。肝心のこの本の内容ですが、究極に追い込まれた時に必ず著者を救ってくれるのが『母親の愛』であり『母への想い』でした。そして著者はもちろん彼の兄弟もいっしょに住めるように骨を折ってくれた人たちの愛、自分の息子の友達というだけで無償の愛をかけてくれた友達の母親など、いろんな方の愛によって著者は助けられます。今の世の中テレビをつければ連日信じられないくらい残酷なニュースばかりで、しまいには『今日は誰が○んだんかね』と麻痺する自分、その事がいつ自分に降りかかってもおかしくない世の中で、心すさんでいく私を久し振りに愛で満たしてもらいました。秋には映画化もされるそうで、今から楽しみです。
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